もうすぐ宝塚映画祭

自分の生まれ育った、でもって今も住んでいる宝塚で行われている小さな映画祭の運営に今年から関わっています。宝塚映画祭。今年でなんと12回目を迎えます。もちろんノーギャラです。なんで“もちろん”なのかよく分かりませんが。

そもそもどうして宝塚で映画祭なんかをやってるかっていうと、実はその昔、今はなき宝塚ファミリーランドの敷地の一角には日本最大級の映画撮影スタジオ・宝塚映画制作所がありました。製作された劇場映画176本、テレビ映画は3200本。撮影所周辺では黒澤明、小津安二郎、木下恵介、稲垣浩など巨匠はもちろん、森繁久弥、三船敏郎、加山雄三、原節子、美空ひばりなどの銀幕のスターの姿が行き交うなど、宝塚はまさに《映画の都》だったのです。その文脈を引き継いで行こうというのが宝塚映画祭の動機というか根拠になっています。ちなみに意外と知られていませんが、東宝の「宝」は宝塚の「宝」ですね。

ただ正直なところ、僕も撮影所の話を詳しく知ったのはここ数年のことで、実際に宝塚で撮られた映画を見たのは去年の映画祭でかかった高峰秀子の『放浪記』(1962年)が初めてでした。1973年生まれの僕がこんな調子ですから、たぶんそれよりも若い世代の人はその文脈自体ほとんど知らないと思います。つまりそれくらい宝塚での映画の文脈は途切れてしまってる。そんな状況の中で孤軍奮闘しているのが宝塚映画祭というわけです。

宝塚は今年、『阪急電車』で久しぶりに映画の舞台として描かれました。地域が映画になるというのはそこに暮らす人にとってなかなか面白い体験で、それまでなんとなく個人的なものとして捉えていた日常の風景が、突然みんなのものとして感じられるようになったりします。これは僕の気のせいかもしれませんが、『阪急電車』公開以降の今津線の雰囲気は、以前と比べて少し大らかで朗らかになったように思えます。僕は映画の専門家ではありませんが、地域を文化的に繋ぎ直すきっかけとして実は映画は意外と有効なんじゃないかと、そういう興味で映画祭に関わっています。

今年の宝塚映画祭のテーマは、ズバリ「ぜ〜んぶ、タカラヅカ!」。宝塚撮影所に今一度スポットを当て、珠玉の名作10本の上映のほか、往年の撮影所スタッフ大集合のシンポジウム、宝塚歌劇の名演出家・植田紳爾のトーク、ファミリーランド閉園から着想を得た大森一樹最新作の上映と頭の先から爪先まで「メイド・イン・タカラヅカ」な内容を予定しています。

僕は、7日〜11日の夕方回終映後に宝塚在住のアーティストやクリエイターをゲストに招いての「イブニング・シネトーク・サロン」というのをやります。映像作家の林勇気さん、漫画研究家の村上知彦さん、競馬シャンソン歌手(?)の須山公美子さん、テクノミュージシャンのヤベミルクさん、元映画祭スタッフでイベント企画会社経営の衣川大輔さんといったなかなか豪華ラインナップ。宝塚映画祭は夜の集客がいつもキツめなので、よかったら遊びに来てください。

●第12回宝塚映画祭

期 間:2011年11月5日(土)~11月11日(金)
会 場:宝塚シネ・ピピア(阪急電車「売布神社駅」すぐ)
料 金:前売り 1,000円 / 当日 1,200円
※お得な1日券、3回券などもあり
主 催:宝塚映画祭実行委員会

岩淵 拓郎

宝塚生まれ/在住。元美術家。もちよりパーティー研究家。最近は文化芸術関連の本や冊子の編集、文化プロジェクトの企画制作など。11〜13、宝塚映画祭総合ディレクター。書籍『内子座〜地域が支える町の劇場の100年』愛媛出版文化賞。スクリーンプリント専門リトルプレス『メッシュ』発売中。一般批評学会所属。

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